「骨風」より、今日ははればれ。
2017.07.21
思い出すのは「笑っていいとも」。
タモリさんといるクマさんは、いつも笑っていたなぁと…
シトウレイさんの投稿で、篠原勝之著「骨風」をとても評価されていて
篠原勝之さんってどんなひとだったかなと頭に浮かんだのはそれでした。
骨風(こっぷう)。
2013年7月号「文學界」から連載され、
3章の書き下ろしと合わせて文藝春秋から出版されました。
これは、17歳で家を出るまで、日々叱責され恐怖しか湧かない父の遺骨を
遠くモンゴルの砂漠の風に撒いたという、章のタイトルにもなっています。
認知症が進む母の、元いた部屋を片付けているときに見つけたノート。
その一節が焼き付いて離れませんでした。
*****
拭き掃除をしていると、流し台の下の収納から、病院で処方された大量の薬が出てきた。袋を開けた形跡すらない。薬を飲むことを忘れていたのか、それとも飲まないと決めたのか。その横にあったダンボール箱の中には使いさしの千代紙と和紙、きれいに畳んだ包装紙、紐、輪ゴムの束などと一緒に一冊のノートがあった。
3月9日 牛乳168円 ほうれん草150円 トーフ98円
4月12日 トマト298円 鮭100円 ゴミ袋78円
5月18日 セロテープ100円 たわし100円 スリッパ300円 甘納豆100円
6月1日 食パン128円 切手400円
この部屋に引っ越した当初に家計簿代わりにつけていたのだろう。その日の買い物が半年分ほぼ一日おきに記され、8月5日を最後に終わっていた。それからどのくらい経ったのだろうか、思い出したようにそのメモは復活していた。
2月27日 晴れ くもり
3月3日 くもり
3月7日 雨ふり
時々気まぐれにその日の天気を書き留めていたようだ。それも、やがて終わる。空白のページを捲り続けると、忘れていた押し花みたいに誰に伝えるでもない一行が現われ、一筋の光りの中の塵みたいに舞っていた。
天気は 晴々 今日は はればれ