ソラとハナ。Vol.5
2022.06.10
(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月一連載、全文寄稿です。)
水無月。
梅雨入りが少し早く、お隣りの梅の実は大きくならず青いまま。梅の花も2週間くらい遅かったからな~と毎日梅の木を見上げている。芒種を過ぎたのに梅酒もまだ漬けていないことが気がかりで気もそぞろ、自分でも梅酒くらいでと可笑しくなりもう少し気を長くもとうよと思う。
6月になるとあの季節。そう、芍薬。今年も様々な芍薬が花屋に並び楽しませてくれる。少し標高のある露地栽培の芍薬が出荷される5月の終わりから6月の初めの2、3週間は本当に心が躍る。我が家にもソラさんにも生け、友人の彼女への花束も芍薬を選んだ。大好きな季節の花、芍薬。
この芍薬、花瓶をしっかり洗い、花バサミで余分な葉を落とし、少し芍薬のつぼみの部分の蜜を水で洗い拭き取り、切り戻しをして生けたのに・・・・・咲かない。そういう思い出のある方は沢山いるのではないかしら。私もその一人。その蜜。ある意味、ちょっと厄介とされていた蜜のお話。芍薬を出荷されている新潟県の花農家鈴木さんがSNSに書いていらした。私は驚きと知らなかった自分への反省をこめて、鈴木さんの言葉のまま届けたいなあと。以下鈴木さんのSNSより転記。
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畑で育つ白の芍薬 マダムクロードダンがいつものように蕾に密をたっぷりつけて光り輝いています。
この蜜の話。ちょっと書いてみたいと思います。
この蜜が蕾に付いて咲きにくくなるってみんなが言ってる。丁寧に拭いてね。とか 水で洗うといいよ。とか
けれどじゃあ なんで蜜が出るの?って話ってあまりされていない。
そりゃ花だからね。花って蜜が出るからっていう話は当たり前の話。でも、花が蜜を出すのは花が咲いてからですよね。
芍薬って 何で蕾がべたべたになってしまうほど蜜が出るの?
芍薬の花は、蕾が草のてっぺんにあって剥き出しになっていますよね?
花を咲かせることが花の使命なのに 一番大切な花が剥き出しになって危険に晒されている!!!!
この蕾を守るために、芍薬は蕾の蜜線から密を出すことで蕾に蟻などの虫を集めているんです。
蕾を害虫が食べてしまうことから守るために、芍薬の蕾を守る虫を蕾に集合してもらっているんです。
この蜜を出す蜜線。蕾が花を開かせていく過程の中で徐々に花の芯の方から出る蜜線に切り替わっていくと言われています。
僕も長年ずっと調べてきて、この話を知った時は花ってのはすごいなぁ。とすごく感動しました。
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芍薬には花外蜜腺という花の外に蜜を出す腺があるというお話。蕾の時、ガク部分にある花外蜜腺から蜜をたくさん出している。鈴木さんの畑に伺った時、山の上の方から雨がザーっとやってくるのがみえて、その雨は芍薬を優しくなでるように通りすぎていった。雨や露を浴びた畑の芍薬はとても美しい。あの自然の営みの中で芍薬の蕾についた蜜は流れ落ち、花の咲く準備が出来たらその蜜腺は役目を終え閉じるのだろうなあ。
今、もう少しこれについて調べているところ。来年の今頃には皆様に私の言葉で芍薬についてお話しできるかなあ。年に数週間だけ楽しむ花、大好きだからもっと知りたいの、芍薬のこと。