「存在のすべてを」
2024.10.15
塩田武士著「存在のすべてを」をようやく読みました。
読み終わったいま、この本に出合えてよかったと心から思える一冊になりました。表紙を眺めて、そのタイトルの懐の深さに感動しています。
シングルマザー、ネグレクト、4歳くらいの男の子ひとり、二児同時誘拐未解決事件、3年間の空白、写実画、画壇と画家と画廊…と続くキーワードからは想像できない、深い深い愛情がしみ込む物語。事件から3年後、男の子がたったひとりで舞い戻った先は、祖父母宅でした。小さな背中のリュックのなかには、着替えと手作りの木箱。木箱には、上下に歯型の穴が複数空いていて、白い欠片のような乳歯が9本収められていた。それを想像するだけで、この3年間に与えられた“父母”からの愛情を感じることができました。ひとつひとつのエピソードは、どこかであった事実なのではと思わせるほどの描写に、ぐいぐい引き込まれます。まるで圧倒的な写実画の前に立つかのように、すべてが緻密に描かれていく。2023年本屋大賞第三位受賞作品。
