まどみちおさんの言葉。
2015.03.11
昨年2月に、104歳の生涯を閉じられた詩人まどみちおさんの、
まだお若い頃、25歳で発表されたことばが、
今日にふさわしいように思えます。
その言葉をここに。
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この世の中に色々のものがあるのは、みんな夫々に、
何等かの意味に於いて、あらねばならないからであろう。
この世の中に存在するあらゆるもの、
それはそのあるがまゝに於いて可とせられ、
祝福せらる可き筈のものであろう。
この世の中のありとあらゆるものが、夫々に自分としての形をもち、
性質をもち、互に相関係してゆくと言ふ事は、何と言う大きい真実であらう。
路傍の石ころは石ころとしての使命をもち、
野の草は草としての使命をもっている。
石ころ以外の何ものも石ころになる事は出来ない。
草を除いては他の如何なるものと言えども、草となり得ない。
だから、世の中のあらゆるものは、価値的にみんな平等である。
みんながみんな、夫々に尊いのだ。
みんながみんな、心ゆくまゝに存在していい筈なのだ。
私はかうした事を考えるとき、しみじみと生きている事の嬉しさが身にしみる。
そして、石ころは大地の上に憩ひ、蚰蜒(ゆうえん)は石ころの下に眠るやうに、
一切のものはそのあるがまゝに於いて、自らに助け合っているのだ。
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まどみちお著 「くまさん(童話屋刊)」あとがきにかえてより。