原田マハ著「奇跡の人」
2018.03.11
ふらりと立ち寄った啓文堂書店にて、
平積された文庫本が、原田マハ著「奇跡の人」でした。
ーアメリカ留学帰りの去場安のもとに、伊藤博文から手紙が届いた。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。彼女に眠っている才能を開花させるため、二人の長い闘いが始まった。
そうこれは、ヘレン・ケラーとアン・サリヴァンの物語が、同じ時代の津軽で展開されるのです。
どうして津軽だったのか、解説には、
その地域に根付くふたつの生業が理由だとされています。
ボサマとイタコ。
ボサマとは、津軽三味線の起源ともいわれる盲目の門付け芸人。
家の前で三味線を弾くなどして食べ物や金銭をもらうひと
もうひとつは、
長く苦しい修行の末に霊感を宿した語り部で、
盲目か弱視の女性しかなれないとされていた、イタコ。
津軽には、技術を磨けば自立して生きていく手段があった。
だから、作者は、この物語の舞台をここに選び、
ヘレン・ケラーの個性を引き出したアン・サリヴァンの奇跡を
より強く印象付けることに成功したのでしょう。
作家原田マハへの信頼感からか、
表紙をみたときに、それがどんな物語か分かっていても
その文章に浸ってみたくなりました。
…読めて、よかった。
「不幸のどん底にいるときこそ、信じてほしい。世の中にはあなたにできることがある、ということを。他人の苦痛を和らげることができるならば、人生は無駄ではないのです。ヘレン・ケラー」