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まどみちおさんのことば。

2018.12.12

104年の生涯を駆け抜けられた詩人まどみちおさん。

たくさんの、ほんとうにたくさんある詩のなかでも

こうして、ときどき読み返したくなることばです。

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この世の中に色々のものがあるのは、みんな夫々に、

何等かの意味に於いて、あらねばならないからであろう。

この世の中に存在するあらゆるもの、

それはそのあるがまゝに於いて可とせられ、

祝福せらる可き筈のものであろう。

この世の中のありとあらゆるものが、夫々に自分としての形をもち、

性質をもち、互に相関係してゆくと言ふ事は、何と言う大きい真実であらう。

路傍の石ころは石ころとしての使命をもち、

野の草は草としての使命をもっている。

石ころ以外の何ものも石ころになる事は出来ない。

草を除いては他の如何なるものと言えども、草となり得ない。

だから、世の中のあらゆるものは、価値的にみんな平等である。

みんながみんな、夫々に尊いのだ。

みんながみんな、心ゆくまゝに存在していい筈なのだ。

私はかうした事を考えるとき、しみじみと生きている事の嬉しさが身にしみる。

そして、石ころは大地の上に憩ひ、蚰蜒(ゆうえん)は石ころの下に眠るやうに、一切のものはそのあるがまゝに於いて、自らに助け合っているのだ。

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まどみちお著 「くまさん(童話屋刊)」あとがきにかえてより。