「すばらしき世界」
2021.02.16
まず最初に、タイトルがいい。ほんとうに素晴らしい。
決して上から目線で言うつもりはありません。
原案になったノンフィクション、佐木隆三著「身分帳」を読んでこそ
脚本と監督を兼ねた西川美和さんが決めたこのタイトルに、大いに感動しています。
そして、記された実在の人物を演じるのが、
役所広司さんというのもほんとうに嬉しいキャスティング。
発表された昨春より、待ちに待った公開でした。
出生届も出されないまま施設に預けられ、人生の大半を刑務所で過ごした男、三上正夫を役所広司。
出所した三上の身元引受人となった弁護士に橋爪功、その妻に梶芽衣子。
なにかと世話をやく近所のスーパー店長兼町内会長に六角精児。
誠実に仕事をこなす役所のケースワーカーに北村有起哉。
その半生に目を付けたテレビプロデューサーに長澤まさみ、
手足となって取材する若手のテレビマンに仲野太賀。
どのシーンを思い出しても、まるでほんとうの暮らしがそこにあったかのようでした。
三上正夫は、たしかにそのとき生きていた。
憤り、悔しみ、悦びを全身で味わって
そしたら虹をみて、あゝやっぱりすばらしき世界だとごちゃまぜになった。