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あとがきに。

2021.03.22 Monday

伊藤計劃著「虐殺器官」を読んだとき、

その展開が想像と離れ過ぎていて、タイトルから来る印象とのギャップに驚いたことを覚えています。

アニメーション映画にもなり、わずかに遺った作品がいまもこうして読み返せることは幸運だと思う。

 

2009年7月の星雲賞授賞式に、故人にかわって登壇したご母堂がこう語っている。

 

息子は、今から七年前、右足の膝から下を司る神経に癌が見つかり、手術をしまして、右足の感覚を失いました。それかえあ三年ちょっとは癌もおとなしくしていたんですが、今から二年ちょっと前に両肺に転移が見つかりました。そのとき息子は、「両足がなくなってもいいから、僕はあと二十年、三十年生きたい。書きたいことがまだいっぱいある。」と申しておりました。『ハーモニー』は、苦しい抗癌剤と放射線の治療の中で書き上げたものでございます。

三月二十日に亡くなるだいぶ前から、食事も水もあまり摂れない状態になっておりました。けれど、亡くなる日の夕食に大好きなカレーが出て、少し食べてみると言いまして、スプーンに十杯くらい食べたんですね。それから一時間ぐらい経ってから、床ずれを防ぐために姿勢をちょっと変えたとたん、すーっと意識がなくなって、そのまま亡くなってしまいました。

お腹が空いたまま逝ったら、三途の川も渡れなかったんじゃないかと思いますが、最後にカレーを食べたので、今帰ってこないところをみますと、なんとか向こうにたどりついてるんじゃないかと思います。応援してくださった皆様、おつきあいしてくださった皆様、本を読んでくださった皆様、ほんとうにありがとうございました。

 

2009年3月20日 伊藤計劃は34歳の生涯を閉じる。

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