言葉の力。
2021.04.30
これまで、何度も言葉に助けられてきた。
同じ言葉ではなく、いつもそれはときによって違っている。
そして、いまは、この言葉をもういちど味わってみたくなりました。
―かけがいのない自分、というきれいごとを歌った歌よりも、くだらない自分というものと何とか折り合いをつけなければならないよ、それが人生だよ、という歌がもしあれば、ぜひ聞いてみたい。
ただ、私たちの人生がくだらないからこそ、できることがある。
ずっと前に、ネットで見かけた短い文章に感嘆したことがある。こう問いかける書き込みがあった。カネより大事なものはない。あれば教えてほしい。これに対し、こう答えたものがいた。カネより大事なものがないんだったら、それで何も買えないだろ。おお、これが「論破」というものか、と思った。
私たちの人生が、もし何よりも大切な、かけがえのないものであるならば、それを捨てることができなくなる。
岸政彦著「断片的なものの社会学」より