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「わたしを空腹にしないほうがいい」

2021.07.04 Sunday

療養中の太田美帆さんからふいにLINEが届く

「この人知ってますか?いちこちゃんが貸してくれた若い俳人の食べものエッセイ。舘山さん 絶対好きだと思いました」

写真には、くどうれいん「わたしを空腹にしないほうがいい」

 

このひとぐらいです(笑)こうしてふいに何かを薦めてくるのは。

さっそく検索したら、恵文社一乗寺店に見つけてポチっ。

読んでみたらなんと。めちゃくちゃおもしろい。

どんどん先を読みたくなるし、ぐっと来る言葉がいっぱいあって。

こういう出会いがあるから、本はどんどん手に取って読む。

 

文章とは不思議なもので、どう頑張ってもそのひとが出る。

隠そうとしても、そのひとの全部がそこに現れるというのが文章なのだ。

だから、年を重ねればいい文章が書けるとかはまったく無い。

あゝおもしろい。だから、本を読むのはやめられない。

 

*****

6月1日

芍薬は号泣するように散る

 

わたしを空腹にしないほうがいい。もういい大人なのにおなかがすくとあからさまにむっとして怒り出したり、突然悲しくなってめそめそしたりしてしまう。昼食に訪れたお店が混んでいると友人が「まずい、鬼が来るぞ」とわたしの顔色を窺ってはらはらするので、鬼じゃない!と叱る。ほら、もうこうしてすでに怒っている。さらに、お腹がすくとわたしのお腹は強い雷のように鳴ってしまう。しかもときどきは人の言葉のような音で、この間は「東急ハンズ」って言ったんですよ、ほんとうです、信じて。

中学生になった頃から実家で共働きの両親の帰りを待つ間に夕飯の支度をすることが多くなって、料理をすることが好きになった。ひとり暮らしをはじめてからは自分の厨があるということがうれしくて、毎日家に帰ったら何を作ろうか考えている。

あなたは今日何を食べましたか?どんな味がして、どんな気持ちになりましたか?生きている限り必ずお腹がすいてしまうということを、なんだかとっても不思議で可笑しく思います。

菜箸を握ろう。わたしがわたしを空腹にしないように。うれしくても、寂しくても、楽しくても、悲しくても、たとえば、ながい恋を終わらせても。

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