ソラの
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ある母のことば。

2014.11.29

ふと読んだ新聞のコラムに載っていた作家の伊藤計劃さんのことが

気になっています。

代表作品のタイトルゆえ、まだ小説を読むことができないのですが、

夫が仕事で読んでいましたので、文庫化された解説文を、読みました。

 

そこには、作者が夭逝後、2009年の授賞式に故人にかわって登壇された

お母さまのことばが載っています。

 

・・・・・

息子は、今から7年前、右足の膝から下を司る神経に癌が見つかり、

手術をしまして、右足の感覚を失いました。

それから三年ちょっとは癌もおとなしくしてたんですが、

今から二年ちょっと前に両肺に転移が見つかりました。

そのとき息子は、

「両足がなくなってもいいから、僕はあと二十年、三十年生きたい。

書きたいことがまだいっぱいある。」と申しておりました。

『ハーモニー』は、苦しい抗がん剤と放射線の治療の中で書き上げたものでございます。

 

三月二十日に亡くなるだいぶ前から、

食事も水もあまり摂れない状態になっておりましたけれど、

亡くなる日の夕食に大好きなカレーが出て、少し食べてみると言いまして、

スプーンに十杯くらい食べたんですね。

それから一時間ぐらい経ってから、床ずれを防ぐために姿勢をちょっと変えたとたん、

すーっと意識がなくなって、そのまま亡くなってしまいました。

 

お腹が空いたまま逝ったら、

三途の川も渡れなかったんじゃないかと思いますが、

最後にカレーを食べたので、今帰ってこないところをみますと、

なんとか向こうにたどりついてるんじゃないかと思います。

 

応援してくださった皆様、

おつきあいしてくださった皆様、

本を読んでくださった皆様、

ほんとうにありがとうございました。

・・・・・

 

わたしたち夫婦には、子どもが授かりませんでしたので

子を想う気持ちを察することはできません。

ただ、育ててくれた母や父が居りますので、

その親を想いつつ、

この言葉を読みました。

 

なんとも強く、凛とした

親の計り知れない底力を感じたのです。

 

親より先に逝くことは、

できれば無いようにしたいと思います。

 

生きているからこそ、

こうしたことも感じられるんですね。

 

ありがたいことでございます。

 

写真はネットより、冬の空。

20141129