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ソラとハナ。長月

2022.09.11 Sunday

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です。全文寄稿いただきました。)

長月。

夜長月という言葉が好き。ああ、穏やかな夜がやってくる。秋の虫の声が猫の額ほどの庭から聞え、窓から涼しい風が入ってくる。ごろんと横になる我が家の主を横目に夏に読み終わらなかった本の頁をめくる。そんな時間が愛おしくてのんびり過ごしたくなる今日この頃。

ソラさんの花生けをはじめた時に、信子さんからのオーダーは「野に咲くようなイメージで」とこの一言だった。野に咲く花を青山のソラさんに持ち込むのは難しいけれども、みんなが花屋で手にできる日本の花農家が育てた季節の花を生けましょうということが私の答えだったと思い出す。それから3回目の秋を迎え、その時のまま季節の花を生け続けている。

白露が過ぎ、重陽の節句、十五夜お月見、秋のお彼岸と暦は忙しい。私の散歩道も秋色にかわり、花屋の店先にはこの時期から秋の植物が待っていましたと並ぶ。秋明菊、吾亦紅、女郎花、芒、竜胆、姫平江帯、撫子、鶏頭、菊、三島柴胡、藤袴、杜鵑草・・・・漢字で書いてみたくなる花の名前、秋は特に漢字で書きたくなるから不思議。その花の中から、今週は少し重いニュースが流れていたから気持ちが軽くなるような取り合わせにしようかなとか、雨が続いていたからしっとりとした色合いで秋の雨を楽しんでもらおうかしらとか、なんだか暑いから秋らしさをぐっと前に出してみようかとか、そんなことを考えて選んでいる。

花屋で花を買うとき「取り合わせが難しいのよ」とおっしゃる方が多い気がする。私は「取り合わせは自由で間違いということはない」と思っているのだけれど。もしもう少し花と近づいて付き合ってみたいなあと考えたら、最初は1種か2種くらいで花をよく観察して生けてみるといいと思う。一種類の花をじっくり見てみると、こんな形なんだ、こういう後ろ姿なのね、この角度は色っぽいなあ、朝が似合う花だなとか。初めて出会った人とだんだんと友達、親友になっていくように花がみえてくる。そうやって友達になった花をどんどん増やしていけば素敵な仲間たちができて楽しく取り合わせができるんじゃないかなと。あとは自分の気持ちや体調を考えて正直に選ぶと自分の居場所に飾る花は気分よく選び取り合わせることができるはず。 これから季節は花を飾りやすい季節。秋の夜長を楽しむために花瓶や籠に秋の花を生けてみるものいいかなあと。私も庭のホトトギス(杜鵑草)が咲いたら、お気に入りの一輪挿しに飾ることを楽しみにしている。だからその前に口の細い一輪挿しがしっかり洗って出番待ち。「さあ、お願いします、出番ですよ~。」と声がかかったときに焦らないようにね。

ソラとハナ。葉月

2022.08.10 Wednesday

(月に一度、ハナノヒト太田瑞穂さんによる全文寄稿です。)

葉月。

あまりに暑くて驚く。今日の気温は世界のどのあたりと一緒だろうと世界の天気をネットで開き、ドバイ?アブダビ?カタール?いやいやあちらは42度もあるらしく、やっぱりすごいなあとパタリと閉じる。そんなことをしたからといって涼しくなるわけでなし、窓の外の蝉の大合唱を聴きながら、ああ、エアコンとサーキュレーターがあるってことは本当に素晴らしいとありがたく思う毎日。そして雨が多いところの方々を思うと心は痛む、これも毎日。夏の花の産地がことごとく長雨、豪雨にやられていて、ああ、あの花を作っている方は大丈夫かしら、あのすばらしい桜を出荷してくれた方は、あの木を出荷してくれた方はと天気図をみながら思いを巡らす。皆様はすこやかにお過ごしですか?

花の話を書いてくださいとお話をいただいているソラとハナ。今回は花火のお話を書きたいと・・・空にあがる大輪の花だからいいかしら。私が育った長岡は花火が有名。華やかな長岡の花火は慰霊と復興と平和を願う花火なので毎年8月2日3日が長岡花火と決まっている。昭和20年8月1日22:30から翌日の0:30まで、長岡は大空襲にあった。長岡っ子は必ずこの空襲の話を家族や学校で学ぶ。そして長岡花火がその慰霊の花火だと知って育つ。今年も長岡花火前日8月1日22時30分に慰霊と平和の花火「白菊」が上がった。長岡の花火師嘉瀬さんが創り出した美しい白菊という花火。この花火は長岡花火のなかでも大切な1発なのだ。

白菊。ほら、菊。花の名前がでてきた。打ち上げ花火の形の種類には植物の名前がついているものがある。今回の写真の白菊は「菊」という種類。菊の花のようにまん丸からすぅーっと尾を引くように花が咲く。その菊が地上まで垂れ下がるように尾を引く花火は「冠菊・かむろきく」。尾を引かずに飛び散るように開く「牡丹」。ヤシの葉のように太い力強くのびる「椰子」。余韻を残すように流れ落ちる「柳」。すこし頭の中に霞のかかる認知症の父は夜空を見上げ「おお~、いい小割千輪菊だな~。」と肩を並べる母に自慢げに話をしていて、花火の話には煙も雲も霞もかからないのだなあと思いながら私達姉妹も一緒に花火を観ていました。

そうそう、母に聞かれたこと。「貴女、1週間近く留守にして庭の花は大丈夫なの??東京は暑くて可哀そうに。」ご心配には及びません。野菜の入っていた発泡スチロールの箱やバケツや花桶に5センチくらい水をはり、出かける前にたっぷり水をやった鉢をつけてきましたら。それにすべての植物を日陰に移してきましたから。ついでに隣の庭友マダムにもちょっぴり話をしておきましたから。だから、庭友マダム側の日陰に鉢を移してあったりする。美味しい長岡の和菓子をお土産に持っていきますから。

ソラとハナ。文月

2022.07.10 Sunday

(フローリスト、ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の寄稿です。)

文月。

梅雨といううっとうしい季節がこんなにも大切だったのかと思った今年。身体が暑さについていけないまま連日の体温か気温かわからないような温度の猛暑。「今日の最高気温は32度です。」と朝の天気予報で伝えられると少しホッとする私がいたりして、これを書いている朝6時の台所は25度で過ごしやすい。

夏といえば、ここ数年朝顔を毎年育てている。今年は種を買ってからグズグズとしていて遅ればせながら6月中旬に種をまいた。こんなに遅くなって種をまくのは初めての事で、4日目に小さな芽を確認したときは嬉しくてうれしくて愛おしくなってしまい、朝に晩にと植木鉢をのぞき込む小学生のよう。家人も仕事に出かける前にヒョイと目をやり今日の朝顔の芽を確認して出かける。子供のいない私たち夫婦が小さな朝顔の芽を我が子のようにその成長を見守っている姿が可笑しく愉快だったりする。

猛暑の間その朝顔は二葉のままを過ごし、母である私は、暑くないか、水は足りているかと気にしていた。雨がサラサラと降り、気温が少し下がった日に小さな本葉の芽を見つけて目を細め、「おお~出てきた、支柱を買ってこなくちゃね。」と、これまたこの成長に合わせて洋服を新調する母親のようなのだから。

猫の額ほどの庭の植物を見ていると暑いときは体を休めているかのように成長を止める。ぐっとこらえて耐え忍び、逆らわず、暑さが過ぎ去ることを待っているかのように。雨が降り少し楽になると待っていましたとばかりに成長を始める。普通のことだけど改めてよく見ていると自分の気持ちも楽になるような気がするのは私だけなのかな。

今年の朝顔は暁という品種で色がいろいろ混ざった種をまいた。何色が咲くかはお楽しみ。間引きをしてあげなくてはいけないのだけれど明日位に少し間引きをして他の鉢に植えてあげようと思っている。朝顔母さんは産毛の生えた本葉を見ては「今日も元気だね。さあ、天気がいいよ。水をあげよう。」と今日も朝から話しかけているのだった。

*朝顔
遣唐使が薬用として種を日本に持ち帰って伝わったとされる朝顔。江戸時代に大きなブームがあったそうです。変化朝顔が大人気となり、朝顔売りがたくさんいたとか。私にとっては小学校の観察実験で育てた朝顔。皆さんも育てませんでしたか?夏休みの前に子供たちが持ち帰ってくる姿を見て、水やり忘れないでねと声をかけたくなります。朝顔は日当たりがよく風通しの良い場所で。入谷の朝顔市は今年も開催されなくて残念だったなあ。

ソラとハナ。Vol.5

2022.06.10 Friday

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月一連載、全文寄稿です。)

水無月。

梅雨入りが少し早く、お隣りの梅の実は大きくならず青いまま。梅の花も2週間くらい遅かったからな~と毎日梅の木を見上げている。芒種を過ぎたのに梅酒もまだ漬けていないことが気がかりで気もそぞろ、自分でも梅酒くらいでと可笑しくなりもう少し気を長くもとうよと思う。

6月になるとあの季節。そう、芍薬。今年も様々な芍薬が花屋に並び楽しませてくれる。少し標高のある露地栽培の芍薬が出荷される5月の終わりから6月の初めの2、3週間は本当に心が躍る。我が家にもソラさんにも生け、友人の彼女への花束も芍薬を選んだ。大好きな季節の花、芍薬。

この芍薬、花瓶をしっかり洗い、花バサミで余分な葉を落とし、少し芍薬のつぼみの部分の蜜を水で洗い拭き取り、切り戻しをして生けたのに・・・・・咲かない。そういう思い出のある方は沢山いるのではないかしら。私もその一人。その蜜。ある意味、ちょっと厄介とされていた蜜のお話。芍薬を出荷されている新潟県の花農家鈴木さんがSNSに書いていらした。私は驚きと知らなかった自分への反省をこめて、鈴木さんの言葉のまま届けたいなあと。以下鈴木さんのSNSより転記。

*****
畑で育つ白の芍薬 マダムクロードダンがいつものように蕾に密をたっぷりつけて光り輝いています。
この蜜の話。ちょっと書いてみたいと思います。
この蜜が蕾に付いて咲きにくくなるってみんなが言ってる。丁寧に拭いてね。とか 水で洗うといいよ。とか
けれどじゃあ なんで蜜が出るの?って話ってあまりされていない。
そりゃ花だからね。花って蜜が出るからっていう話は当たり前の話。でも、花が蜜を出すのは花が咲いてからですよね。
芍薬って 何で蕾がべたべたになってしまうほど蜜が出るの?
芍薬の花は、蕾が草のてっぺんにあって剥き出しになっていますよね?
花を咲かせることが花の使命なのに 一番大切な花が剥き出しになって危険に晒されている!!!!
この蕾を守るために、芍薬は蕾の蜜線から密を出すことで蕾に蟻などの虫を集めているんです。
蕾を害虫が食べてしまうことから守るために、芍薬の蕾を守る虫を蕾に集合してもらっているんです。
この蜜を出す蜜線。蕾が花を開かせていく過程の中で徐々に花の芯の方から出る蜜線に切り替わっていくと言われています。
僕も長年ずっと調べてきて、この話を知った時は花ってのはすごいなぁ。とすごく感動しました。
*****

芍薬には花外蜜腺という花の外に蜜を出す腺があるというお話。蕾の時、ガク部分にある花外蜜腺から蜜をたくさん出している。鈴木さんの畑に伺った時、山の上の方から雨がザーっとやってくるのがみえて、その雨は芍薬を優しくなでるように通りすぎていった。雨や露を浴びた畑の芍薬はとても美しい。あの自然の営みの中で芍薬の蕾についた蜜は流れ落ち、花の咲く準備が出来たらその蜜腺は役目を終え閉じるのだろうなあ。

今、もう少しこれについて調べているところ。来年の今頃には皆様に私の言葉で芍薬についてお話しできるかなあ。年に数週間だけ楽しむ花、大好きだからもっと知りたいの、芍薬のこと。

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