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「ソラとハナ」睦月2024

2024.01.09

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)

睦月。
寒中見舞い申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

私の生まれた長岡では「なじらね?」という言葉があります。「最近どうですか?」という意味の言葉ですが、ご機嫌はいかかですか?調子はどうですか?をまとめて一言、「なじらね?」。簡単な挨拶言葉だけど、なんとなく相手に寄り添っているなあと思い、私はこの言葉が歳を重ねて好きになりました。
「すこやかにお過ごしですか?」も「なじらね?」

さて、花の話をば。

年の始めの花。今年は喪中なので松も千両もほかの花も合わせず、日本水仙をざっくりと花瓶に生けました。我が家は毎年「日本水仙」と決めています。いろいろお正月の花を生けたのですが、家人が唯一「この花は好きだな。」と言ってくれたのが「日本水仙」だったので、その年以来ずっと馬鹿の一つ覚えのように私は「日本水仙」を生けているのです。おかしな話でしょう。

風雪のきびしい季節に咲くので「雪中花」ともいわれる「日本水仙」、関東では南房総の鋸南町が有名です。なんでも江戸時代安政年間(1854年~60年)に房州から船で出荷していたとの事。「元名(もとな)の花」として武家屋敷や町家に売られ高貴な花をして好評を得たという記録があるそうです。鋸南町のホームページに書いてありました。元名は鋸南町の地名ですね。

江戸時代の人はなぜこの花を高貴な花と言ったのでしょう。寒い冬に咲く凛とした立ち姿、それもありますが、やはり香りもあると思います。バラの香りが芳醇な香りならば、「日本水仙」は清らかな香り。そう、まわりの気を浄めてくれるような香りです。歳神様をお迎えするときにこの香りはとてもふさわしいのではないかなあと個人的には思っています。

高貴な花ともてはやされた「日本水仙」も戦時中は栽培することが許されなかった時もあったようです。「日本水仙」に限らず、ほかの花もそうでした。食糧難に花などを作ってという事です。房総の「日本水仙」も球根を焼き捨てることができず、掘り起こして山に捨て置いたり、隠し持っていたりで、戦後また再開されたと伺いました。今、楽しめるのはその方々のおかげです。

「日本水仙」の三大産地は南房総と淡路島と越前。越前水仙の福井県は県の花にもなっているようです。海が近いところに産地が多いですね。海流に乗って原種が漂着したという説もあり、牧野富太郎さんや柳宗悦さんはこの説を推していたとか。室町時代に中国から渡ってきたという説よりもこの説の方がロマンチックで好きだなあ。

水仙の香やこぼれても雪の上 千代女