「ソラとハナ」神無月2024
2024.10.10
(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)
神無月。
玄関の棚上に転がしてあったサフランの球根からチラリと白い芽が出ていたのを発見し、とても嬉しくなった昨日。このまま育ててもいいのだけれど、私は小さな鉢に土をいれ球根を植え、朝日と共に咲いた花から花粉が付く前に蕊を摘みとり乾燥させて料理に使っています。
実は昔、スペインのサフラン農家に密着したドキュメンタリー番組に感動してしまったからなのです。広い畑、のぼる朝日、一斉に畑に出る女たち、咲いたばかりの沢山のサフランの花を一つ一つ摘み、カゴに入れ運び、作業小屋にあるテーブルの上は花が山盛り。今度は皆テーブルに集まり蕊を素早く摘みとり収穫するというものでした。大変な地道な作業風景なのですが、私にはとても神聖なものに感じられ、ものすごく心に残っています。それ以来、サフラン球根も土に植えるようになったのでした。サフランは晩秋の紫の花、我が家では11月頃から咲き始めます。
秋は紫の花が美しい。気温のせいでしょうか。お日様の光の加減でしょうか。秋の七草にも紫の花がありますね。「秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数(かぞ)ふれば 七種(ななくさ)の花」「萩の花 尾花(おばな)葛花(くずばな) なでしこの花 女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお、桔梗といわれる)の花」万葉集にある有名な山上憶良の2首。
諳んじることができるのかといえば、出来ないのでこっそりメモをとってあるのです。ただ花の名前を覚えるにはちょっぴり七五調の「ハギ、ススキ、クズ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ、ナデシコ」が私は覚えやすかったなあと。あら、でも、萩はブルーベースのピンク、藤袴は赤みの強い紫、葛とキキョウ位かなあ。しかも初秋が多いなあ。
学生の時に勉強した襲の色目ならばどうだと古い資料を取り出しました。ほら、萩、萩重、紫苑、そして移菊(うつろいぎく)。柔らかな紫を合わせ植物の名前がついた襲がありますよ。今も野紺菊を好きなのは「移菊」と言う名前にキュンとしたからかしら。また源氏物語が流行っているから襲も調べる人が増えているかも。
何はともあれ。
「秋の紫の花は郷愁を誘い情緒があり品がよい。」と染物屋の小森谷お父さんと渋谷にあったスナックドンのママ、やよい園芸のお母さん、大好きな3人が四半期前に店先で話していたことを信じ思い出して、これからも秋になると紫の花を生けていくと思います。
秋は紫の花。涼しくなりました。花を飾りたくなる季節です。