ソラの
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「ソラとハナ。」霜月2024年

2024.11.11

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)

霜月。

立冬を過ぎて朝晩の冷え込みが増してきました。

この季節になると栗のお菓子をいただくことが多く、立派な栗をみたり美味しい栗を食べたりするたびに思い出す方がいます。それは生け花の先生。私はお月謝を納めてきちんと花を習ったのはこの先生だけで、20代のころから十数年、先生の家に生け花を習いに行っていました。お免除や花展にも興味がなく、忙しくなると長くお休みするという悪い弟子でしたが「また時間が出来たら花を生けにいらっしゃい。」という言葉に甘えて続けることができました。

先生のお宅の座敷で正座をして、20代の私と70代の先生のほぼ二人きり。最初の頃は緊張して緊張して、何が何だかわからないお稽古でした。そんな私のために先生がお稽古の後にお茶を出して下さり、その時のお菓子が先生手づくりの栗の渋皮煮。これがもう本当に美味しかった。この時から緊張がほぐれ、長いお付き合いになっていきました。

先生で思い出すのが花器の話。お正月花のお稽古の前に沢山お持ちの花器の中から生けたい花器を選ぶお稽古がありました。何十年も生け花を教えている先生の花器の種類、その数はものすごいもので、専用の部屋があり、その他に畳二畳分の床下収納。作家モノの器から海外の花瓶、なんだかわからないような骨董品に蚤の市で買った趣のあるもの、素材も様々で気に入って手に入れたものばかりなので、「それはどのどこでみつけてね・・・こうなのよ」とお話も長い・・・面白い。きれいに整理されているその花器の中から選ぶのは本当に楽しい時間でした。

生ける花が先か、花器が先か。悩ましいところもあるのですが。

私が当時花屋だったこともあり、先に器を選んでおき、それに合う花を選ぶという花を仕事にしているからこそのお稽古をしてくださっていました。だって選べないからね、お客様のところに行って花を生ける時、お客様のお手持ちの花器に生けるから。決めきれない私はいつも二、三種類選ぶというズルをしていましたけど。

どういう設え(しつらえ)なのか。想像して器を選び、花を生けなさい。
忘れません。この言葉。

冬は外に咲く花が少なくなるので、家の中に花を飾りたくなる季節です。クリスマスやお正月もちかく、人が集まることも多いでしょう。自分の好きな花瓶や花器を手に入れるのも楽しいですよ。難しいことは抜きにして、これはあのテーブルの上に置く花瓶とか、これはトイレの一輪挿し用とか。台所にはジャムの瓶やビネガーの瓶もいいですよね。ネットでも簡単に買える時代ですが、できればそのものみて、手に取って、お気に入りに出会うといいなあと思っています。今年も世田谷のボロ市が近づいてきたなあ。