「ソラとハナ。」弥生2025年
2025.03.10
(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)
弥生。
3月「やよい」。
私が花屋の仕事を始めたお店の屋号だったこともあり、私が尊敬してやまない、そのお店のお母さんの名前なので、「やよい」は私にとって特別な月の名前です。私も私の母も3月生まれという事もあるのですけど。
「木草弥や生ひ月・きくさいやおひづき」が詰まって「やよひ」となったという説が有力なのだそうですが、我が家の庭でもバラの芽も動き出し、宿根草のホトトギスやミントも芽を出し始め、木や草が勢いよく成長を始めました。昔の人はきっと足で土の温かさを感じ、春風を楽しみ、木や草の芽のでてくる姿にワクワクしたのでしょうね。
現代の3月は皆様行事が多くて忙しいのではないでしょうか。桃のひな祭り、最近はミモザの国際女性デー、卒業式や卒園式、気づけばお彼岸、そして送別会。他にもイベント目白押し。いろいろあってちょっと疲れたそんな時に、香りのよい花を飾ってみることをオススメします。だって春はいい香りの花が沢山あるのですから。
スイートピー、ヒラヒラとした花びらが可愛らしいと思いますが、大人っぽい色もあるんですよ。私は相変わらずグレースという薄紫の品種が好きですが・・・。それからフリージア、今年は特別にいいと感じています。「いい」というのは何故か今年のフリージアはどの花屋さんでみても、花がしっかり沢山ついていて茎もしっかり長く香りもいいのです。何かあったのかなあ・・・。あんまり見かけないけれど、チューリップも香りのある品種があるのですよ。ストックも甘いやわらかな香りがしますね。ミモザアカシアも、ムスカリも、ヒヤシンスも。
花の香りは気分を和らげてくれるような気がします。ふわっと風にのって香りが鼻をくすぐる時、私は何とも言えない幸せな気持ちになります。花を切り戻して生け、花が水をたっぷりと吸い上げた時に、とってもいい香りがするのですよ。そうそう、夜の方が香る花もあるし、陽が差してくると香る花もあるし、是非、お試しあれ。
ちなみに花屋のお母さんは3月生まれで「やよい」さん。そのお母さんの実家の軒先を借りて花を売っていたお父さんは、大家さんのお嬢さんの「やよい」と名前の書いてある自転車を借りて花苗や花の仕入れに行っていました。その名前を見た仕入れ先の方が「やよい」という花屋さんだなと思いこみ、「やよいさ~ん」と呼ばれ始めたから「やよい」が屋号になったとか・・・、その後、二人は結婚したという話でした。20代の私はその話を聞き、そうだったのね・・・・・、結婚が後なのか・・・とちょっと残念に思った次第でありました。