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スノーマンストーリー/レモンエアライン0116便

2013.01.16

雪が降って、

雪が積もって、

ぼくは生まれた。

 

黄色い帽子をかぶった

小学生3人組にぼくはつくられた。

 

真っ白なからだと、真っ白な顔。

そして真っ黒な目。

すべてがマルでできている。

ただ小枝でできた眉毛だけが、

勇ましくつりあがっている。

それがぼく。

 

「明日も来るねー!」と、

黄色い帽子の3人組は駆けていった。

 

夜になると寒さが増した。

 

茶色い帽子に茶色いコートを着た

おじいさんが近づいて来た。

何やらブツクサ独り言をいっている。

世の中にたっぷりと不服がありそうなタイプだ。

おじいさんはぼくの前で立ち止まった。

 

おじいさんはゆっくりとしゃがみ込んで、

ぼくの目をじっと見た。

30秒くらい続いた。

 

ぼくは寒さに耐えるのが辛かったから、

グチャっとこぶしてつぶされても、

それはそれでいいやと思った。

 

おじいさんの目は細くなって、

口がニンマリとした。

眉間の深いシワもたいらになった。

そしてさっきよりも軽やかな足どりで去っていった。

 

ぼくは胸の奥のほうから、

ポカポカしたものがやってきた、と思った。

 

次の日、太陽がぼくを照らした。

ぼくはすこし小さくなっていた。

 

黄色い帽子の3人組がやってきた。

「あれ?なんか顔が違う!こんなだったっけ?」

ぼくの勇ましい眉毛はハの字型になっていた。

 

ぼくはやさしい顔に変わってしまった。

それは太陽のしわざじゃない。

あのおじいさんのしわざなんだ。

 

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シラスアキコ(コラムニスト)

クリエイティブユニット「color/カラー」(www.color-81.com)の

コピーライター・クリエイティブディレクターとして活動。

「モノ語りのあるモノづくり」を大切に、

企業のブランディングから商品開発、プロダクトデザインの企画、

広告制作、ラジオCMなどを手がける。

60年代の日本映画とフランス映画、赤ワインが好物。

 

*レモンエアラインは、毎週水曜日に出航です。

こころがふうわりと浮遊する軽やかなじかんを、お楽しみください。*

レモンエアライン/ロゴ