ポストオフィス・ラブ/レモンエアライン0320便
2013.03.20
郵便というシステムに興味がある。
郵便にまつわることすべてが、
ロマンチックにおもえる。
好みのレターセットを選び、
便せんに文字をしたため、
封筒に住所をしるす。
切手を貼った瞬間、その封筒は一気に郵便物へと変化する。
この凛と花開く一瞬の様子を見逃さない。
ポストに投函するとき、いつもほんの少しだけ緊張感が生まれる。
「何か間違ってないか?」という、
根拠のない不安が顔を出す。
住所、書いた内容、そもそもポストの左側に入れるのが
正解なのだっけ、などと。
ポストの穴は、世界中の街につながっているのだ。
一度投函したら、もう後戻りはできない。
どこか別の次元に連れていかれるような、
非日常なムードがすきだ。
夜中、たとえば23時ごろの郵便局もロマンチックだ。
薄暗い空間に、小さな灯りの小さな窓口を頼って、
緊急で郵便物を送らなければならない「訳あり」な人たちが列をなす。
BGMもない静まり返ったそこには、
郵便局員と訳ありの人の小さな会話、
「ポン」という小気味良いスタンプの音だけが響く。
私は用事もないのにどうしても郵便局に行きたくなって、
記念切手のシートを1枚買ってしまったことがあるのは秘密だ。
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シラスアキコ(コラムニスト)
クリエイティブユニット「color/カラー」(www.color-81.com)の
コピーライター・クリエイティブディレクターとして活動。
「モノ語りのあるモノづくり」を大切に、
企業のブランディングから商品開発、プロダクトデザインの企画、
広告制作、ラジオCMなどを手がける。
60年代の日本映画とフランス映画、赤ワインが好物。
*レモンエアラインは、毎週水曜日に出航です。
こころがふうわりと浮遊する軽やかなじかんを、お楽しみください。*