パルコ劇場にて。
2015.09.21
パルコ劇場で30年ぶりに上演される、清水邦夫作品を観てまいりました。
演出は、初回の蜷川幸雄さんに代わり、行定勲さん。
主演は、三上博史さん。
幕間を15分とったものの、全2時間45分。
観客が総立ちになるカーテンコールで締めくくられました。
まるで、マラソン選手のように鍛え絞られた肉体で
鬼気迫る形相で演じた三上博史。
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清村盛(三上博史)は有名な舞台俳優だったが、突然引退を宣言し、
日本海に面した実家の古びた映画館に妻(神野三鈴)と隠棲している。
かつて恋愛関係にあった若手女優(倉科カナ)が訪ねるが、
清村は現実と虚構の区別を失い、狂気に陥っていた…。
・・・・・
この筋に沿ってお芝居が進みます。
ただ、途中何度も
まるでシェークスピア劇を観ているような錯覚に陥ったのです。
台詞がそれを比喩したり、引用したりされている訳ではありません。
俳優たちの全身全霊を使っている様が、
まさにそんな印象を受けたのでしょう。
20代のころ、はじめて芝居を観た感動で、
そのルーツを知りたくて意気揚々と購入した〝シェークスピア全戯曲全一冊〟を
思い出します。
そこには、喜怒哀楽の沸点がすべて描かれていると聴きました。
全戯曲がこの一冊に収録されているそれは、電話帳並みに重くて大きくて、
新聞の活字よりも小さな文字がびっしりと埋まっていました。
400年前の人々を魅了したたくさんの名台詞や、人間関係を
探しながら読み進めたのを思い出します。
三上博史が扮する俳優・盛を狂気に陥らせた不安は、
思い込みの強さとそれに縛られてしまう弱さが、そうさせていたのでしょうか。
ひとは、時に、あるひとつのことに拘ることがございます。
拘りひとつは些細なことでも、
それを持ち続けることで、だんだんと視野が狭くなるような気がして。
だから、拘らない。
日々、出来るだけ自分にそう言い聞かせて・・・いるんですけどね。