植本一子著「家族最後の日」を、読んで。
2017.01.29
写真家 植本一子さん
待望の新作「家族最後の日」が、ソラに届きました。
なかに、ほんの数行、「美肌室ソラ」のことを書いているからという理由で…
生まれてはじめて本に書かれた興奮で、すぐに読みはじめます。
そしたら、読むのが止まらなくなってしまい
その日のうちに読んでいました。
母との絶縁、義弟の自殺、夫の癌―。
写真家・植本一子が生きた、懸命な日常の記録。
・・・・一番辛いのは、間違いなく石田さん自身だ。私には石田さんの苦しみのすべてを想像できない。私の苦しみに寄り添ってくれる人はたくさんいるような気がするが、私は石田さんに寄り添えるのだろうか。(中略)苦しみをぶつけられる相手がいないこんなとき、ふと思い出したのはやはりお母さんだった。お母さんに泣きついてしまいそうな自分がいた。お母さんにしかぶつけられない類の辛さのような気がした。そう考えると、家族というのはなんなのだろう。家族だからとすべてをぶつけても、受け入れられるとは限らないのに。私は石田さんにずっと甘えていたのだ。ぶつけていたのだ。そしてその存在をなくしてしまうかもしれないのだ。
コインランドリーに行き、一人になったとき、泣きそうになった。本当に、これからどうなるのだろう。乾燥機にかけているあいだにスーパーへ行くが、何を買えばいいのかがよくわからない。帰り道に銀杏の匂いを感じて、また辛くなった。この秋と去年の秋は同じはずなのに、全然違う。見るもの聞くもの、全部違う。どこかでずっと同じだと思っていた。毎年同じように暮らすのだと思っていた。(2016年9月14日の日記より)
これは、植本一子さんの日記が集められた本。
いい写真を撮るひとは、いい文も書くひとでした。
読み終えてみて、これは本の感想ではなく…
何かを、決定的に分かった体験を持っているひとは、
いいものが、自ずとわかるのだろうと感じました。
だって背表紙に、
“かなしくなったらグッドして”
植本一子著「家族最後の日」2/1発売。
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