「五月の貴公子」
2017.04.23
天を仰ぐように咲く花水木が見頃です。
アスファルトの割れ目から顔を出すように
たんぽぽがぽんぽん咲きました。
土が残っている場所は、いつの間にか野草の絨毯敷きつめられて
桜はあっという間に若葉で全身緑色。
風薫る五月に向けて、景色がみるみる変化しています。
先日の詩と音楽「眠る前に一篇の詩を。」で、
ブックピックオーケストラ功刀貴子さんが選んでくださった一篇を
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五月の貴公子 萩原朔太郎
若草の上をあるいてゐるとき、
わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、
ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、
まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、
ああすつぱりといつさいの憂愁(ゆうしゅう)をなげだして、
わたしは柔和の羊になりたい、
しつとりとした貴女(あなた)のくびに手をかけて、
あたらしいあやめおしろいのにほひをかいで居たい、
若くさの上をあるいてゐるとき、
わたしは五月の貴公子である。