「苦海浄土」
2020.11.25
石牟礼道子「苦海浄土」を読みました。
小学校の教科書ですこし、水俣病のことを学んだ記憶が蘇る
公害という言葉を、そのときはじめて知ったのでした。
愛知県に生まれた私は、お隣の三重県はコンビナートからのばい煙で
四日市ぜんそくに苦しむひとが多いと聞いて育ちました。
1950年ごろにはじまる高度経済成長期の日本は、
こうした公害に苦しむ人が多くあった時代でもあると…
これを繰り返さないということを、覚えておきたい。
「苦海浄土」は、水俣病を伝える文学としてあまりにも清冽であり
第一回の大矢壮一賞に選ばれるが受賞を辞退したことも深く考えるエピソード。
読んでいるときも、まるで長い唄であるかのように先へ先へと目が追いかけてき
疾病により発語が困難であるはずの患者が、そう言っていたとしか思えない言葉の数々が強く残る。
―極限状況を超えて光芒を放つ人間の美しさと、企業の論理とやらに寄生する者との、あざやかな対比をわたくしたちはみることができるのである。