ソラの
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「ソラとハナ。」弥生

2023.03.10

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)

弥生。

花月、花見月、桜月。春がやってきました。特に今年は「春~~~!!」と感じるのは私だけでしょうか。ここ数年の春と違い、街中が華やいでいるような気がしてならないのですが、私がちょっと戸惑っていて不思議な気分です。そうはいっても春一番が吹いたというニュースをみて、「泣いてばかりいたって幸せは来ないから~重いコート脱いで~出かけませんか?もうすぐ春ですね~恋をしてみませんか~」と鼻歌を歌ってしまいました。歌が昭和歌謡でキャンディーズ。そんな自分に笑ってしまった今日この頃です。皆様、すこやかにお過ごしですか?

花屋の頃の三月と言えば・・・桜三昧でした。あちこちのお店やイベント、結婚式の披露宴などに沢山たくさん、これでもか~と桜を生けていました。桜は啓翁桜に始まって河津、彼岸、寒緋、陽光、東海、吉野と続き、八重桜、関山、普賢象、鬱金、御衣黄。3月の頭から4月の頭まで、南から北へと産地をかえ、品種をかえて生けていきます。蕾から満開まで、その場所やコンセプトに合わせて生けるので、どの花屋さんもドキドキ。花市場では大きな桜の枝が沢山いろいろ並んでいて圧巻です。

桜と言えば忘れられない桜の花生けがありました。2011年4月終わりの婚礼の桜。東日本大震災の年の話です。花嫁は「滝桜」で有名な福島県三春町にご縁のある方でした。「滝桜」の咲く頃に三春町でご親族が集まって顔合わせをするはずだったけれど、震災でそれどころではなかったと。こんな時に結婚式というのもといろいろ考えているとおっしゃっていたのですが、結婚式と披露宴を行うということになりました。三春の滝桜の下での顔合わせが出来なくなったから披露宴当日に桜を生けてほしいとのリクエスト。季節的には難しいなあと思いながらお話をうけ、市場の人とも何度も何度も相談をして八重桜を仕入れることができ、満開の八重桜を生けることができました。あの時のドキドキとパーティが終わって花嫁の笑顔を見た時のほっとした気持ち、一生忘れられない思い出です。

今日は暖かく我が家の近くの桜の蕾もぐっと膨らみました。東京は桜の名所が多いからあちこち散歩に行くのもいいですね。両国辺りはいろいろな桜が植えてあるみたいですよ。両国に住む花仕事仲間の花爺が申しておりました。私はちょっと足を延ばした公園の緑の桜御衣黄を楽しみにしています。すこしほかの桜より遅いのですが。いつか三春町の滝桜も見に行ってみたいなあと思います。さあ、桜ご飯を炊かなきゃ。