ソラの
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「ソラとハナ。皐月」

2023.05.10

(ハナノヒト太田瑞穂さんによる月に一度の連載です)

皐月。

暑かったり、寒かったり。今年は落ちつかない春でした。夏の気配が立ち始める立夏も過ぎ、もうすぐ母の日ですね。子供のいない私たち夫婦は、あっちの母にこっちの母に電話を架ける母の日です。昔働いていた花屋のお母さんが夫の母に初めて会ったときに「この子は花の仕事が大好きでよく働きます。物日(花屋の忙しいとき)は、家の事を放り出して働くと思いますがご承知おきを。」と昭和な口調で言ってくれたのをいいことに母の日は仕事に集中してしまう不出来な嫁です。実家の母はそんな私をよくわかっていますけれど。

今回は芍薬の話をしようかなあと思います。母の日にも大人気の花です。

実は先日、いつも欠かさず花を飾っている飲食店の方から「芍薬を長持ちさせる方法はありますか?」とメッセージが届きました。彼女は芍薬が大好きでシーズンになると様々な品種の芍薬を飾りお店は芍薬尽くしです。今年もきっと・・・。

芍薬、品種もたくさんありますね。皐月、エッジドサーモン、レッドチャーム、華燭の典、富士、サラベルナール、滝の粧、夕映え、マダムクロードタン、白雪姫、かぐや姫・・・・。花屋でどの品種に出会うかも楽しみです。出会いですからこれはね。花屋で芍薬を買うときは、葉も茎もしっかりしたプリっとした蕾のものと少し蕾が緩んだものを混ぜて選ぶと時間差で咲くので楽しめます。品種を混ぜて買うのもいいですね。

買ってきたら、よく洗った清潔な(ここが大切)花瓶にたっぷりと水を汲みましょう。

まず、花瓶の中に入ってしまう余分な葉や飾る時にちょっと邪魔かなと思う葉を落とします。蕾はどうですか?蜜がたっぷりついていてベトベトしていませんか?これは花外蜜腺と言って、蕾のガク部分にある花の外側にある蜜腺から蜜を出しているので健康な証拠。花を害虫から守るために蕾の間だけ益虫の蟻などを呼ぶために蜜を出しています。咲いてくると花の芯にある蜜腺へと切り替わるすごいシステムです。その蜜は乾いて固まり咲きにくくすることがあるので、蕾を流水で優しく洗いましょう。畑に降り注ぐ優しい雨みたいにね。咲きやすくなります。

よく切れる花バサミ、ナイフでサクッと茎を切り戻します。よく切れるが大切です。ジャギジャギになる刃物は駄目ですよ。切り戻したら花瓶に生けていきます。芍薬は花が大きいからしっかりした花瓶に生けるといいですね。倒れちゃわないように気をつけてね。花の栄養剤を使うこともおすすめします。花屋でお配りしている小袋のもの、ホームセンターや花屋でもボトル入りを売っている場合があります。使い方をよく読んで栄養剤を使ってくださいね。

さあ、咲いてきて長持ちさせる方法。無いわよ。夜だけ冷蔵庫に入れるとか駄目よ。寒い暑いで花だって体調が悪くなっちゃうから。咲いたら眺めて、散りゆくさままで楽しんで。しいて言えば、陽のあたる窓辺に置くとやっぱり温度も高いから早く咲くし、咲いてからも早いです。昔の花屋は店前が北向きの物件を選んだそうだから、わかりますよね。

蕾から花びらが散るまで。芍薬と過ごす初夏の贅沢なひと時を。