岸田奈美著「傘のさし方がわからない」
2023.07.15
エッセイを読みたくて続けざまに2冊目を購入するのは、我ながら珍しいこと。(4歳下のダウン症の)弟さんの書いた数字がノンブルになってる単行本を見たくて読みたくて、ポチっと購入しておりました。
『24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)』
―そして、慎重に紙へペン先をつける。紙と目の距離が、異常に近かった。うまい棒1本の半分の長さくらいしか開いてなかった。むくむくの手で、ゆっくり、ゆっくり、0から9までの番号を、順番に、ひとつずつ。納得いくまで、弟は3回も書き直した。「かけた」 弟はまた、あのひょっとこ顔をした。見てるこちらが手に汗にぎるスローな進捗だったが、とにもかくにも、すべての数字が書けた。書けたのだ。これには母が泣き、わたしは笑ってしまった。(続く)