森茉莉著「貧乏サヴァラン」を読む。
2014.08.17
雑誌CREA「おいしい読書」号を片手に、
大型書店で見つけた文庫、
森茉莉著「貧乏サヴァラン」を読んでいます。
森茉莉(1903-1987)
森鴎外の長女。50歳を超えて小説家としてスタート。
父から溺愛されて育ったせいか、
いわゆる自己肯定感に充ち満ちた性格を損なうことなく
晩年、強烈な読者を持つ作家・随筆家として活躍します。
〝森茉莉 自分を偽らない人生〟にそれがよく表現されていました。
その「森茉莉全集 全八巻」の作品の中から、
「食」の短編を編者・早川暢子によって取り出されたのが
文庫オリジナル 『貧乏サヴァラン』。
巻頭に収められた短編の中で、
《ほんものの贅沢》という一篇があり
それがとても痛快なのでここにすこし。
・・・・・
だいだい贅沢というのは高価なものを持っていることではなくて、
贅沢な精神を持っていることである。
容れものの着物や車より、
中身の人間が贅沢でなくては駄目である。
・・・・・
うーん。
二度三度と同じところを読み直してしまいます。
森鴎外に溺愛された幼少時代、
物に不自由しない暮しを送ったからこそ
ここまで言い切って、
それをまた読む者に有無を言わさない納得力もあるのでしょう。
そしてまた、父の著作権が期限切れした後の苦労も味わっているから。
生まれ持った境遇を選び直すことは叶わなくても
十人十色の人生を垣間見ることなら
いつでも出来る。
それが、読書のたのしみかな。