ソラの
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「行く」石垣りん作より

2015.08.25

ヒロイヨミ社 山元伸子さんから、

読書サロンで読む詩歌やことばが届きました。

その中の一篇をここに。

 

自分ではめぐり会うことのなかった作品を、

山元伸子さんのフィルターを通して選んでもらえることも。

この世界は、知らないことに溢れているから

知らなかったことを知るというその一点も、愛おしい。

 

ソラの読書サロンへどうぞ。

9月9日(水)19時~お席ございます。

くわしくは http://bihadasora.com/archives/10884

 

・・・・・

「行く」 石垣りん作

木が
何年も
何十年も
立ちつづけているということに
驚嘆するまでに
私は四十年以上生きてきた。

草が
昼も夜も
その薄く細い葉で
立ちつづけているということに
目をみはるまでに
さらに何年ついやしたろう。

木は
木だから。
草は
草だから。
認識の出発点は
あのあたりだった。
そこから
すべてのこととすれ違ってきた。

自分の行く先が
見えそうなところまできて
私があわてて立ちどまると
風景に
早く行け、と
追い立てられた。

・・・・・

120901