“禍福は、あざなえる縄の如し”
2016.05.11
黒柳徹子著「トットひとり」を読了。
つけられたタイトルの重みに、
テレビに映る徹子さんの姿がいじらしいと感じられます。
まるで家族のように慕っていたひとたちは、
すべてこの世を去ってしまった。
たいせつなひとが、それぞれに
死の直前まで懸命に生きる姿が描かれた一冊でございました。
向田邦子さんとのエピソードをここに。
・・・・・
「“禍福はあざなえる縄の如し”って知ってる?」って、私に訊いてきたのも覚えてる。
向田さんが書いたセリフにあって、私が訊いたのかな?
とにかく私が「知らない」って答えたら、
「幸せと災いはね、かわりばんこに来るの。
幸せの縄と不幸の縄とが縒ってできているのが人生なのよ」って。
それが、向田さんが最初に教えて下さったことだったから、とっても強く記憶に残ったのね。
だから、向田さんが乳癌になったり、直木賞を取ったり、そしてあの事故が起きたりして、
「本当に“禍福はあざなえる…”だわ。向田さんが言った通りだったんだなあ」って思う。
でも私、今でも思い出して笑っちゃうんだけど、
最初にその言葉を教えてもらった時に、
「でも、幸せの縄二本で編んである人生はないの?」って訊いたのよ。
そしたら向田さん、言下に「ないの」(笑)
・・・・・
これは、向田邦子さんがこの世を去って25年たったときに、
妹さんの向田和子さんとの対談で「小説新潮」に掲載されたものだそう。
幸も不幸もひとぞれぞれの感じ方があるでしょう。
ただ、昔から、ひとはこうして鼓舞してきたのねと思うと
すこし、力が湧いてくるような気がします。