ソラの
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向田邦子著「思い出トランプ」より。

2017.09.29

1981年の飛行機事故で亡くなったニュースを思い出しつつ

いまごろようやく手に取った短編集です。

向田邦子さんが直木賞を受賞された作品が編纂される「思い出トランプ」。

カードと同じく、13編が集録されていました。

 

読み終わって間もないからか、

自分まで文章がうまく書けるようになったような錯覚を覚えつつ

同じ年の、類いまれなる才能に畏敬の念がつのります。

 

読んでいるそばから引き込まれて

「かわうそ」の宅次が脳卒中の発作でたおれたあとには、

ほんとうにじじ、じじと頭の中で地虫が鳴いているような気がしたり

厚子が、なにかに似ていると思ったのが、かわうそだったのも

まるで目の前にきょとんとしたかわうそがいるような気がしたのでした。

 

また、その終わり方がなんともいえない。

かわうそに似た明るい妻が、隣の奥さんとの立ち話で夫の血圧の話などしているスキに、

障子につかまりながら台所へゆき、包丁をにぎるとこで、この短編が終わっている。

 

―写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった