「言葉の護符」
2020.05.03
大切な人に何かを届けたいと思うなら
言葉を贈れ
けっして朽ちることのない
言葉を贈れ
人生という荒野で見つけた
言葉の花を贈れ
断崖から
手を突き伸ばして
ようやくつかみとった
一輪の花のような
ただ一つの言葉を贈れ
愛する者には言葉を贈れ
その人を守護する言葉の護符を贈れ
万感の思いを込めた
しかし
無私なる言葉の護符を贈れ
朽ちることなきものを誰かに捧げたいと願うなら
言葉を贈れ
願いを込めた言葉ではなく
祈りに貫かれた言葉を贈れ
愛する者に言葉を贈れ
その人の生を祝福する言葉の護符を贈れ
***
九州限定の文芸誌「片隅03」に掲載された若松英輔「言葉の護符」
熊本で起きたマグニチュード7.3という地震の後に発行された誌面には、
ゆっくりと徐々に回復していこうとするひとびとの願いを感じることができました。
ことしの母の日は、ビデオ通話でことばを贈ろう。
喜怒哀楽も生きてこそ
明けて再会するときに、歓びが倍増している自信あり。